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チャーリー・ウィルソンズ・ウォー
物語には始まりと終わりがあるが、現実はその結末の後も続いていく。チャーリー・ウィルソン(トム・ハンクス)にとって、物語はソ連のアフガン侵攻から始まっている。そして目指すハッピーエンドはソ連軍の撤退。この時点では、アメリカの敵はソ連の共産主義であってイスラム原理主義ではない。パキスタンの国境に広がるアフガン難民のキャンプは救うべきかわいそうな人々であって、この時代にはまだテロリストの巣窟とは呼ばれていなかった。圧倒的な武力の差にも関わらず抵抗を続ける彼らを助けるために武器を供与することは、この時点では善意とみなされた。難民キャンプの惨状を視察したチャーリー・ウィルソンは、国外では武器の調達、国内では予算の獲得に奔走する。

チャーリーはソ連軍撤退を正義と信じて行動する。一方、それを見ている私たちは撤退後アフガンがどうなっていったかを知っている。ここに皮肉が生まれる。映画の台詞の中には、チャーリー・ウィルソンが勝利したあと、世界がどうなっていくのかを暗示する言葉がちりばめられている。資本主義対共産主義という図式の元、冷戦当時は隠れていた要素が宗教である。アフガニスタンの人たちだけではなく、アメリカ人もまた宗教に対して頑固な考えを持つ人たちが多いことが、映画の中で何度も示されている。難民キャンプでアメリカ人の議員と難民たちが神は偉大だと声を合わせて叫ぶ場面は、後の歴史を知っている私たちにとっては皮肉なものになっている。アフガニスタンに元々ある民族対立も台詞に出てくる。アメリカとアフガンやパキスタンとの間にある人権に対する考え方の違いも語られる。ただ、当時は共産主義という共通の敵が、いろんな矛盾を覆い隠していた。

戦争の勝利、敵の撤退は、物語の結末にふさわしい、興奮する出来事だ。そして、スポーツ観戦した後のように、勝利の余韻に浸ったあと、人はこの地域に興味を失う。しかし、現実はその後も続いていく。チャーリーの台詞を借りると、ボールは弾み続ける。映画ではこの部分は最後に少し描かれるだけだが、その後のアフガンと世界情勢を暗示することには成功している。元々資源が少ない貧困地帯であり、長年続いた戦争で荒廃している国土に、大量の武器が残される。復興の中心となるべき年代の人々は戦死しており、10代の子供たちが人口の多くを占めるが、彼らを導く人々は少なく、学校のような教育施設も十分ではない。民族対立を抱えており国内はなかなかまとまらない。近隣の武装組織から見ればここは武器と人材の宝庫であり、絶好の隠れ家でもある。世界から忘れ去られたこの地域は、やがて9.11という歴史的な出来事を引き起こし、世界から再び注目を集めることになる。

アフガニスタンに学校を、というチャーリーの提案は、この地域に対する無関心のなか、却下される。武器はあるが教育を受ける機会ももてず仕事も見つからないという状況の中、当時少年だったアフガニスタンの子供たちはその後どうなっていったのか。2008年5月11日付のニューヨークタイムズには、アメリカ政府がアフガニスタンに巨大な刑務所を作る計画であることが報じられている。アルカイダやタリバンとの戦いで捕らえた囚人を愁傷するためだ。

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つぐない
少女ブライオニー(シアーシャ・ローナン)の偽証で回り始めた歴史の歯車は、どんなに反省しても、謝罪しても、止めることができない。明るい未来が待っているはずだった青年(ジェームズ・マカボイ)の人生は、恋人(キーラ・ナイトレイ)との別れと逮捕、刑務所、徴兵、出征、撤退、と悪い方向に進んでいく。成長して自分がしたことの意味を理解した彼女(ロモーラ・ガライ)の謝罪はもうこの現実の進行に追いつくことができない。

成長したブライオニーが使っていると思われるタイプライターの音とともに語られるある夏の出来事は、やや混乱していて、時間は前後し、1つの出来事が少女の視点と当事者の視点から二度描写されるときもある。まるで思い出したくない出来事を懸命に思い出しながら語っているかのように、ぎくしゃくした感覚を残したまま、性的気配に満ちた暑い夏が描写される。戦場の描写は彼の視線に寄り添う形で描写され、疲労と病気で彼の意識が混濁してくるにつれ、混沌として現実と夢が交錯したものになっていく。

後に作家になった彼女の人生を変えたのは、青年が使ったタイプライターだ。彼がシーにあてた手紙を書くときに戯れに打った言葉が、まだ騎士道物語のような幼い恋愛物語しか知らない少女にいきなりリアルな性愛を見せつける。彼女は嫌悪感を抱き、その感情が偽証を生み出すことになってしまう。タイプライターが打ったたった1つの単語が、彼女に十字架を背負わせ、彼女は老人になるまで苦しみながら作家としてタイプライターを打ち続けることになる。

取り返しのつかない形で事件は起こり、彼女の謝罪は直接彼らには届かない。取り返しのつかない現実との距離を埋めるものとして、フィクションが物語の中に入ってくる。年老いてなお苦悩の表情を浮かべないと自分の過去を語れないブライオニー(ヴァネッサ・レッドグレイブ)にとって、このフィクションは贖罪のために必要なものだ。まだ人格ができあがっていない幼い頃の過ちをずっと背負い続けてきた彼女の苦悩が、彼女の皺に刻み込まれているような気がして、終盤のインタビュー場面は見ていて胸の詰まる思いがした。

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大いなる陰謀
共和党議員(トム・クルーズ)とジャーナリスト(メリル・ストリープ)、大学教授(ロバート・レッドフォード)と学生(アンドリュー・ガーフィールド)、学生同士の討論(マイケル・ペーニャ、デレク・ルークなど)・・・。この映画は様々な議論で構成されている。アフガニスタンでの戦闘場面を除くと画面上で大きな動きがあるわけではない。それなのに、そこで交わされている議論が白熱していておもしろいので目を離すことができない。どちらか一方がしゃべる続ける説教でもなく、日本のテレビ討論番組によくいる、相手の言うことを聞かずに大声でわめく人間もいない。どちらが正しいか、観客自身が考える余地を残すように、この映画は作られている。

芸能ニュースの下にテロップで流れる臨時ニュースはアフガンでの新作戦の展開を報じている。9・11直後と違い、もはやテレビの視聴者は無関心で、そこで実際に血が流されていることを想像することもない。経済的に困窮する若者が軍に行き、裕福な若者は経済的に成功することだけを夢見ている。そのような現状に、教室で、オフィスで学生と向き合いながら、ロバート・レッドフォード演じる大学教授は戦い続けている。彼の教え子二人は他の学生のような無関心よりも戦場に行くことを選ぶ。別の教え子は国内の現状に絶望し、授業に熱心に通わなくなる。性急に現実を変えようとするものと、現実を変えることを諦めたもの。この大学教授はそのどちらでもない。華々しいスポットライトをあびるわけではない教室で、学生の背中を押してやるという地味な仕事が、彼の現実に対する関わり方だ。

共和党議員の語る論理は、ここ数年アメリカ政府が主張し、国民が支持してきたものだ。アメリカ対テロリスト、正義対悪の単純な構図。ただ、そこには嘘がある。イラク、イラン、アフガニスタン、それぞれの国特有の事情が無視され、悪の枢軸というわかりやすい言葉に単純化される。今ではこの論理に懐疑的なジャーナリストも、かつては愛国的な番組を制作しこの対テロ戦争を支えてきた。大企業に買収されて傘下に入ったテレビ局は、スポンサーのために視聴率を稼ぐことが求められ、かつてのような硬派な番組を作る余力は残っていない。

議論を構成する台詞がよく練られていておもしろい。そしてそれを話す俳優たち、特に主演の三人はすばらしい。メリル・ストリープが演技派、トム・クルーズがスター俳優といった先入観を観客は俳優に対して持っているが、二人の白熱した対決場面を見れば、そういう分類はあまり意味がないことに気づくだろう。また、スパイゲームなどもそうだったが、若者に対する愛情を感じさせる役が、今のロバート・レッドフォードにはぴったりはまる。

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