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接吻
冒頭、やや不安定な足取りで、後ろのポケットに長い柄の金槌を挟んだまま男(豊川悦司)が階段を登っていくとき、この靜かな高級住宅街の平和が破られることを観客は感じ取り、戦慄を覚える。過剰にホラー的な演出はないのに、手に汗をかくような緊張感を感じさせる万田邦敏監督の演出がすばらしい。世界全体に対して見下すような態度と笑顔を集まったテレビカメラに向けながら、男は逮捕される。

テレビに映し出されたこの笑顔が、もう一人の孤独な魂を揺さぶる。おとなしく、一途でまじめであるがゆえに周りに溶け込めず、周りから見下されてきた女性(小池栄子)は、この笑顔に自分が抱いているのと同じ世間への敵意を感じ取る。犯罪者の経歴を調べていくうち、彼女は自分と彼を一種の共犯者と考えるようになる。自分と彼は世間から見下されてきた、今度は私たちが世間を見下す番だ。彼女の妄想は誰に対しても心を閉ざしていた殺人犯を巻き込んでいき、殺人犯は彼女からの婚約の申し入れを受けることになる。面接室での彼らの表情が面接を重ねるごとに変化していく。小池栄子の表情の微妙な変化には驚かされる。

彼らを法の側から、つまり理性の側から見つめていたはずの弁護士(仲村トオル)は、一途な彼女の抱く妄想に巻き込まれ、冷静な観察者ではなく、嫉妬を抱いた三角関係に入り込んでいく。暗い階段で二人が向かい合う場面の異様な緊張感がすごい。ここではまるで弁護士が迷宮に入り込んでしまったかのように感じられる。

わたしはあなた、あなたはわたしと言わんばかりの彼女の妄想には、ひとつ無意識に避けている場面がある。それは殺人場面の具体的な描写だ。夜に彼が見て苦しむ殺人場面の悪夢を、彼女は理解することができない。面接室で、彼女は公園で見知らぬ子供と笑い合いながらブランコをこいだことを語り、彼は子供を打ち殺した場面が脳裏から離れない。黙秘を続けてきた殺人犯は社会に対して口を開こうとしていく。二人は共犯者であり一心同体という彼女の妄想は、殺人という現実の前に瓦解していく。

この妄想の崩壊に彼女がどう対処することになるのか。それが衝撃のラストにつながることになる。二人の間に生じ始めた距離を埋めるために彼女がとった行動は常軌を逸したものかもしれないが、最初から最後まで彼女は一途であり、その一途さが私たちを揺り動かす。たった一人の女性が抱いた妄想が、空間を覆い尽くし、二人の男性を捉え、離さない。場面全体を支配するような小池栄子の存在感に圧倒される。

nobody 27
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