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サッドヴァケイション
中国マフィアの暴力からなんとか逃れ、川の水に身を浸しゆったりと流れていく健次(浅野忠信)の姿は、男性の暴力的世界から逃れ、母性的な環境に身を置いているように見える。冴子(板谷由夏)との関係やユリ(辻香緒里)とアチュン(畔上真次)との共同生活によって、彼は穏やかな私生活をつくろうとしている。間宮運送の社員たちは社会で居場所をなくした人たちで、家族的な関係でつながっていて、彼はすんなり社員たちの中心的存在となる。彼は血のつながりがない人たちと、擬似的な家族関係を作り上げる。社員の後藤(オダギリジョー)と平尾台の広大な光景の前で語り合う場面では、トラックの運転手たちが社会の軋轢から逃れ遊牧民的で自由な生活を送っていけるような幻想を観客は抱くかもしれない。しかし、彼の周囲の穏やかな生活はやがて悲劇的な終わりを迎える。

アチュンたちとの擬似的家族関係は、アチュンがマフィアたちに連れ去られることによって唐突に終わる。間宮運送の社員たちの中には借金取りの暴力的な取り立てに怯えているものがいて、一見自由気ままに生きているように見えている後藤もその一人だ。擬似的な家族関係は外からの暴力で壊れてしまうもろいものだ。

しかし、この映画で描かれているのは男性的な暴力の世界よりもむしろ母性的な力の恐ろしさだ。健次と千代子の対立には「家」をめぐる2つの原理の衝突が見られる。夫と子供を捨てて「家」を出ていった母親千代子(石田えり)を非難する健次に対して、千代子は自分のいる場所が「家」であり、お前はここに住めばいいと言い返す。千代子にとって、家は父親中心に形成されるものではない。父親が誰であろうと、自分の腹から生まれた子は自分の子供であり、自分の血を継ぐものだ。健次を捨てて家を出て別の男と結婚して勇介(高良健吾)を生み、勇介が問題を起こせば今度は戻ってきた健次に期待をかける。母系社会の原理を体現するような存在の千代子に、健次は復讐を試みるが、むなしく空転するしかない。それは兄弟同士の暴力による対決を生み、ユリを性暴力の被害者にしてしまう。健次の子供を宿した冴子は千代子の家に引き入れられ、千代子の血を継ぐ家系は強化される。母系を中心とした血縁の力に健次は完敗する。

間宮運送には、2つの世界が共存している。千代子を中心とした血縁の輪と、彼女の夫(中村嘉葎雄)が受け入れる社員たちの血のつながらない擬似的家族関係。そして社員たちの中には、血縁に固執する千代子とは違うタイプの女性がいる。梢(宮あおい)は男性たちと同じように仕事をこなすが、後藤を慰める姿は母性的に見える。血のつながった母親を捜してはいるが、復讐のためではなく、親代わりの茂雄(光石研)やいとこの秋彦(斉藤陽一郎)との関係も良好で、間宮運送という場所に馴染んでいる。そして、ユリの飛ばすシャボン玉はすべての対立を包み込むように大きく広がっていく。健次が戻ってきたとき、ここはどんな世界になっているだろうか。

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アチュン~
fumiyaさん、TBありがとうございましたm(__)m
確かに、測れないほどの常識の枠をはずれた一種の“母の愛”だったのかもしれませんね。 なんだかアチュンがいなくなってから少しその行方が気になりつつも、重い展開を予想せざるを得なかったですが、根底に流れる“血”の濃さが、心とは裏腹に思うようにならない憤りを自分の中に感じるところもありました。
【2007/10/02 22:37】 URL | cyaz #ID9gmbWk [ 編集]


cyazさん、コメントありがとうございます。
この子がだめならまた次生めばいい、それがだめなら孫がいる、という彼女のおそろしいほど「前向き」なところがすごかったですね。血のつながりって、自分を守ってくれる場合と、自分を縛り付ける場合があるみたいですね。
【2007/10/02 23:18】 URL | fumiya #AKKjkRR6 [ 編集]

勝者は誰だ
千代子の前に健次は完敗、に見えつつも、すべての受け皿として間宮社長が存在している、と思いたいのは自分が男の子だからでしょうか(笑)。

てなわけで、細々と復活した当方に、TBありがとうございました。
【2007/10/03 22:36】 URL | にら #lcbXb0/Q [ 編集]


にらさん、コメントありがとうございます。
確かに間宮社長の存在は大きいですね。くせ者たちを受け入れ続ける彼の寛容さは、千代子の母性の力に拮抗する力を持っているのかもしれません。
【2007/10/03 23:13】 URL | fumiya #AKKjkRR6 [ 編集]


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