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過去をリセットして、新しくやり直すこと。一見前向きに見えるこの態度には、無責任な忘却が含まれている、なぜなら、人は一人で生きているわけではない以上、自分の過去には他人の生が含まれているから。恋人関係、不倫関係、親子関係、それらをすべてなしにして、新しい人生を生きるということは、必然的に他人を切り捨てることを伴い、切り捨てられた過去は、水のように現実の隙間から染みだして戻ってくる。いくら土をかけて埋めても、大地が揺れ、ひびが入り、海の水がしみだしてくる東京の埋め立て地のように。

刑事(役所広司)は何度も耳をふさぎ、目を閉じる。しかし、空気を切り裂くような赤い服の女(葉月里緒奈)の叫びは指の隙間から耳に入り込み、目を閉じても夢の中に女は現れる。見捨てられ、見放されてきた女は、刑事にしっかりと見ることを求めているのであり、おぼろげな姿で現れたりはしない。前作LOFTと同様に、監督黒沢清と撮影芹沢明子が映し出す女性の美しさはすばらしい。

赤い服の女の憎悪は、自分を虐待した存在に向けられているのではない。自分に視線を向けていながら、積極的に関わりたくないので見なかったことにしてきた、不特定多数の視線こそが問題になっているのであり、自分はここにいるという叫びは、一人に向けられているわけではない。いわば都市に住む人々全体が呪われているのだ。ワタシハシンダ、ダカラミンナモシンデクダサイ、ワタシハシンダ、ダカラミンナモシンデクダサイ・・・。そしてみんな、自分たちが忘却した過去の海へと引きずり込まれていく。

しかし、すべての過去を記憶することはできない。過去は幻、もう一人の女(小西真奈美)はささやく。すべて忘れて、前に進んでいけばいいよ、とやさしく語りかけ、相手を赦し、受け入れる女と、私を思い出せ、私の叫びを聞け、私を見ろ、と詰め寄る女。過去からの声は二つに分裂している。しかし、優しく赦す女もまた、最後には叫び、その声は男には届かない。過去の残滓である骨を拾い集める男はどこに向かえばいいのか。アカルイミライへか、過去の償いへか。


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TBありがとうございました。
>過去をリセットして、新しくやり直すこと。一見前向きに見えるこの態度には、無責任な忘却が含まれている、なぜなら、人は一人で生きているわけではない以上、自分の過去には他人の生が含まれているから

はじめまして。
冒頭のこの文章が全てを現しているような気がします。
すばらしいレビューを読ませていただきました。ありがとうございます。
私はと言えばまだ黒沢マジックの煙に巻かれたままです。
またお邪魔します。

【2007/03/03 21:44】 URL | hyoutan2005 #- [ 編集]

はじめまして
TBをありがとうございました。
レビューを読ませていただき、改めてこの映画の意図を
反芻できたような気がします。染み出してくる海水、最後に
流れる呪いの言葉・・・それらの意味がより鮮明に理解でき、
たいへん参考になりました。
今後ともどうぞよろしくお願いします。
【2007/03/03 22:59】 URL | masktopia #- [ 編集]

忘却した過去の海
こんばんは。

>そしてみんな、自分たちが忘却した過去の海へと引きずり込まれていく。

いいですね。
こういう表現大好きです。
ゾクゾクきます。
【2007/03/03 23:21】 URL | えい #- [ 編集]


hyoutan2005さん、はじめまして。
赤い服の女性の呪いは普通の人から見れば明らかに理不尽なんですが、動機の理解できない犯罪って、こういう世界を呪うような心理から来ているものが多いのかもしれませんね。

masktopiaさん、はじめまして。
連続殺人の加害者、被害者ともに身勝手な自分だけの論理で生きているんですよね。それが恐ろしく、救いがないんですが、これは時代の空気をよく反映していると思いました。ただ、小西真奈美さんのような救いになる存在は彼の映画であまり出てこないキャラクターなので、少し驚きました。
【2007/03/03 23:53】 URL | fumiya #AKKjkRR6 [ 編集]


えいさん、コメントありがとうございます。
他の映画ではこういうちょっと文学的な言葉は恥ずかしいんですが、彼の映画の美しい場面を見ると、自然とこういう言葉を使いたくなります。彼の映画はどれも撮影がすばらしいですね。
【2007/03/03 23:55】 URL | fumiya #AKKjkRR6 [ 編集]


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