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30代。独身。眼鏡。超短髪。あごひげ少々。映画館に通うのが趣味。コメントやトラックバックはお気軽に。

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太陽 The Sun
天皇ヒロヒト(イッセー尾形)の身体は神格で縛られている。食事や着替えといった日常生活にも侍従たち(佐野史郎、つじしんめい)がつきそい、彼の体は儀式的な作法によって自由を奪われている。侍従によって着せられる軍服は彼の体を拘束しているように見える。彼の口は神格の重みによってゆがみ、多くの言葉は声になる前に口元で消えてしまう。そして、まるで深海の中にいるような、外の音がはっきり聞こえない暗く狭い部屋。日本で一番安全な場所にいる男は、家族からも離れ、周りの人間と人間同士としてつきあうことも禁じられたまま、孤独な生活を送っている。

皮肉なことに、敗戦後米軍がやってきてから、彼の身体は自由を獲得していく。米軍の写真撮影に応じる彼の楽しそうな表情。空の下でカメラマンにおどけたポーズまでしてみせる彼の体は重苦しい儀式的な生活から解放されて伸びやかだ。また、英語を話し始めてから、彼の言葉は前より幾分軽やかになる。マッカーサー(ロバート・ドーソン)との会食の場面で、部屋に一人残された彼はダンスを踊るようなしぐさをする。ソクーロフは政治的な主題を、一人の男の身体が解放される過程として描いている。

米軍カメラマンから「チャーリー(チャップリンのこと)」と呼びかけられる彼は、独特の穏やかなユーモアの精神を持っている。通路で迷ったり、階段でつまずいたり、彼は時々喜劇的なしぐさをするのだが、それが堅く儀式的な動きをしている侍従たちと対比されていて面白い。後半になると抑圧から解放されユーモアを発揮する場面が多くなる。チョコレートが届いたときの、侍従たちの態度をからかうような場面のおかしさ。マッカーサーの彼に対する態度が変わっていくのは、彼の持つ独特の雰囲気に魅せられていくからだ。

彼は一体何者なんだろうか。研究者としてカニを眺めながら語っている彼は、突然話題を科学から戦争の原因へと変える。重要な御前会議で明治天皇の歌の意味を語り出し、それは降伏の話になっていく。筆を持ち和歌を考えていた彼は、息子に戦争の原因を書いた手紙を書き始める。悪夢の中で米軍の爆撃とナマズのイメージが混ざり合う。政治の話をするマッカーサーに突然ナマズについて語り始める。統治者ならば責任を追及することができる、だが今目の前にいる子供のような男は一体何者なのか。統治者/科学者/歌人/父/夫・・・?

もちろん、彼が自由を獲得する過程には、多くの犠牲者が横たわっている。空襲によって廃墟になった街。人間宣言を録音した録音技師の自殺。米軍の追求は逃れても、逃れられない視線がある。皇后(桃井かおり)が録音技師の死を知ったときの、あのおそろしい眼。ついさっきまで仲むつまじく語り合っていたとは思えない、彼女の厳しい視線は何を意味しているのか。多くの死をもたらした政治の世界から、皇后は彼を連れ出し子供たちのもとへ走り出す。それはまるで、監禁された人が助け出されたかのような光景だ。

映画『太陽』オフィシャルブック
映画『太陽』オフィシャルブックアレクサンドル ソクーロフ Aleksander Sokurov


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太陽

闇は、まだ明けなかった・・・好きな事には没頭し饒舌に語りどこか天真爛漫さが見え隠れする、ごく当たり前の普通の人間、天皇ヒロヒト。神格化されてしまった事にもそうだが多分自分では意図する方向とは違った方に導かざるを得なかった、とてつもない時代の大きな流れの中 シャーロットの涙【2006/09/23 23:42】

『太陽』

北風と太陽の太陽戦略のごとく、深刻さで迫らずに、ぽかぽかと心を照らしてくれた。昭和天皇を主人公に、終戦直前から、戦後マッカーサーGHQ総司令官との会談を経て、人間宣言に到るまでのを描いたフィクション。8月15日のニュースは小泉首相の靖国参拝のことばかり。戦争と かえるぴょこぴょこ CINEMATIC ODYSSEY【2006/09/24 00:06】

『太陽 The Sun』

監督:アレクサンドル・ソクーロフCAST:イッセー尾形、佐野史郎、桃井かおり 他1945年、第二次世界大戦敗戦直前の日本。焼け野原になった東京の中で整然と残った皇居。壊滅的な状況の中、国民から現人神と崇められた天皇ヒロヒトは・・・・ロシアの名監督がメガホンを **Sweet Days**【2006/09/24 06:42】

『太陽』

----ようやく観に行けたね。「うん。この映画、日本で公開されたのも驚きだけど、それが銀座シネパトスってのも意表を突いていた。『モレク神』のときだったかな。ソクーロフ監督が昭和天皇を主人公にした映画を作るという話が流れたとき、まず日本公開はありえないだろうと ラムの大通り【2006/09/24 08:58】

『太陽』

銀座のシネパトスは、以前、成人映画をやっていた場所なので、多少の違和感があり、立地条件的にも苦しい環境にありますが、この映画が上映されるやいなや、異例の観客動員を記録しているようです。 映像と音は言葉にできないけれど【2006/09/25 22:05】

映画『太陽』を観ました

もう、ヒロヒトは人間くさくて、不器用でかわいくて。守ってあげたくなっちゃうのです。不遜なのを承知で。こんな愛らしい人が、意に沿わず現人神として崇められていたギャップ。そんな時代の、悲しさや馬鹿馬鹿しさ。 ドアの猫穴【2006/09/30 16:02】

太陽

日本では中々公開されなかった昭和天皇と終戦前後を描いた映画。人間でありながら神であった天皇の立場の重みと孤独さが印象的。★「太陽」2005年ロシア、イタリア、フランス、スイス 110分監督:アレクサンドル・ソクーロフ出演:イッセー尾形   桃井かおり   cinema capsule【2006/10/02 23:24】

太陽

ソクーロフは、独自の美学に貫かれた作品を発表し、ロシアが世界に誇る映画監督である。世界十二ヶ国で絶賛をうけながらも、日本での公開は不可能といわれたソクーロフ監督の傑作『太陽』が、ついにその封印を解かれる。歴史学を学んだ学生時代に構想したというこの作品を. パピ子と一緒にケ・セ・ラ・セラ【2006/10/04 11:15】

太陽

 1945年の8月の終戦間際に日本において、天皇は、退避壕か生物研究所で暮らしていた。 なまずが踊るように、空襲をするイメージを悪夢とし、日本の領土が焼け野原となっていく様を描きつつも、昭和天皇という存在の人間としてのスタンス、生物研究者と.... とにかく、映画好きなもので。【2006/10/06 19:23】

太陽:the sun 悲劇に傷ついた、ひとりの人間

京都シネマにて、鑑賞アレクサンドル・ソクーロフ監督、ロシア・イタリア・フランス・スイス合作作品、2005年、115分、カラー、何でも世界12ヶ国で絶賛されながらも、日本での公開は不可能ではないかと言われていた映画だそうだ。という話題性も高いのか、満席で立 銅版画制作の日々【2006/10/09 14:35】

【劇場鑑賞110】太陽(THE SUN)

天皇ヒロヒト――彼は、悲劇に傷ついた、ひとりの人間。その苦悩その屈辱その決意彼は、あらゆる屈辱を引き受け、苦々しい治療薬をすべて飲み込むことを選んだのだ。 ダディャーナザン!ナズェミデルンディス!!【2006/10/10 20:58】

【!傑作!】映画評 『太陽』 アレクサンドル・ソクーロフ監督

あの本当にすごいヒトラー映画『モレク神』を世に放ったロシアの鬼才アレクサンドル・ソクーロフ監督が、その連作として昭和天皇と戦争を題材にとり、しかも主演にイッセー尾形を起用したと聞いたとき、正直かなり不安でした。 鬼才といえど何かしら勘違いをして、日本人 ~Aufzeichnungen aus dem Reich~ 帝国見聞録【2006/10/21 11:50】

太陽(05・ロシア・イタリア・フランス・スイス)

この映画の製作に関わった国々を見てあらためて驚いた。監督は、ロシアのアレクサンドル・ソクーロフ。主人公は天皇ヒロヒト(イッセー尾形)。日本では、作れない映画だろうな・・・と思った。日本では、言霊思想がある。タブーなことは言うのもはばかられる。だから no movie no life【2006/11/16 01:30】

太陽

満 足 度:★★★★★★★★★       (★×10=満点) 監  督:アレクサンドル・ソクーロフ キャスト:イッセー尾形 、      ロバート・ドーソン 、      佐野史郎 、      桃井かおり 、      つじしんめい 、     ★試写会中毒★【2006/11/18 17:19】

映画のご紹介(220) 太陽

ヒューマン=ブラック・ボックス -映画のご紹介(220) 太陽-孤独とは?人が孤独を一番強烈に感じるときとはどんなときなのだろうか。乗っていた船が遭難して、一人無人島に漂着したとき。誰も知り合いのいない街で、進むのも困難なほど.... ヒューマン=ブラック・ボックス【2006/12/10 15:57】

太陽

去年公開されて、ロングヒットになった太陽。昭和天皇が神格否定するまでを描いています。これが2,30年前だったら、きっと日本ではタブーとされただろうと思います。戦争を知らない世代が多数を占めてきてる今、私達に歴史を再認識させる意味でも、日本人だからこ bibouroku【2007/06/26 21:40】
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