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LOFT ロフト
考古学研究者吉岡誠(豊川悦司)は、美しい三人のファム・ファタールによって逃れようのない呪いにかけられている。小説家春名礼子(中谷美紀)、女子大生亜矢(安達祐実)、そしてかつては美しかったと思われる1000年前の女性のミイラ。三人の女性は、1つのイメージを共有している。例えば、吉岡が女性を抱きかかえる、古典的な映画を思わせるショットが何度も反復される。彼はミイラを、亜矢を、そして礼子を抱きかかえる。

映画の前半で、礼子は床にうずくまり泥を吐く。もちろん、泥は沼に浸かっていたミイラと彼女をつなぐ絆を表すだろう。そして床をはうようなしぐさはJホラーにおいて人を呪うものがするしぐさであり、後半に亜矢によって反復されることになる。冒頭、鏡の中の自分に疲労や衰えを見いだす礼子は、美を保つためにミイラになった1000年前の女性の呪いを無意識のうちに助ける役割を担っている。殺されても何度もよみがえる亜矢は、もはや女子大生亜矢なのか1000年前のミイラなのか区別がつかない。そして一見亜矢に呪われているように見える礼子は、亜矢の小説を書き写すことで、実は亜矢のしぐさを反復している。そして彼女は亜矢が指さす運命の場所へと吉岡を導くだろう。三人の女性は、1つの呪いを共有している。

サスペンス映画を思わせるサブプロットが、礼子の位置をわかりにくくしている。殺人者、過去に殺された被害者、美女、美女を救う恋人。西島秀俊、安達祐実、中谷美紀、豊川悦司が演じるこのプロットは、これだけで1つのサスペンス映画が成立するものになっている。ここで中谷美紀が演じているのは命をねらわれる美女であり、豊川悦司とのラブロマンスにも発展する。しかし、これは観客を混乱させる罠である。女子大生亜矢の死など、この映画にとって、呪いが発動するためのささいなきっかけにすぎない。亜矢の恨みや復讐といった、人間的心理もこの映画には関係がない。亜矢の死体はミイラの呪いを代行すべく起き上がるのだから。また、吉岡にとってこのラブロマンスは罠だ。彼は礼子を呪いから解放してくれる救世主のように考えているが、実際には彼女は無意識のうちに彼を破滅へと導いているのだ、あの不気味な桟橋の上へ。

もちろんこうなった原因は彼自身にある。大学に保管しておくべきミイラを、彼は自分の側に置いている。彼はミイラがもたらす悪夢に怯えながらも、同時にこの腐らない死体に惹かれている。彼が亜矢の死体を見つける場面では、彼は死体の美しさに吸い寄せられるように近づいていく。また、土に埋められた亜矢の髪にそっと愛撫するように触れる場面。彼は亜矢を土に還すことを選ばない。彼が愛するのは「沼の女」だから。そして、彼が礼子の姿に引きつけられる、あの異様な美しさを感じる場面。磨りガラス越しに彼女の姿が近づいてきて、彼はガラスに指を当てる。沼の濁った水面に浮かんでいるかのような、中谷美紀の妖しいイメージ。

沼の桟橋にある不気味な滑車。生と死をつなぐ禁断の装置の前で中谷美紀が呆然と立ちつくしている。滑車を上げるレバーが勝手にくるくる回っている。黒沢清の世界では、運命の歯車は一度回り出すと誰も止めることはできない。彼女は無意識のうちにこの歯車を回す役割を果たしていたのだ。それにしてもなんて逃れがたく恐ろしい、しかし美しい呪いだろうか。

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この記事に対するコメント
初めまして
こんにちわ。「LOFT」へのTBありがとうございました。こちらからも幾つかTBさせて頂きました。
素晴らしい!どの記事も素晴らしいですね。深い解釈と見事な語り口で、恐れ入ってしまいます。中でも、「ゆれる」と「LOFT」は、自分が読み解けなかった部分を素晴らしくスラスラと書いていらっしゃるので感服いたしました。(ぺこり)
さて本作「LOFT」ですが。わかりにくいと言えばわかりにくい気がしたのですが。こちらで記事を拝見して、なるほどー と思った事が多々ありました。ズバリ「嫌い!」と書いてらっしゃる方もいらっしゃいましたが、私は好きとも嫌いとも断言できない感じで、どこかモヤモヤしていたので。参考になりました。黒沢監督と言えば「CURE」が今でも強烈な印象で忘れられないのですが、未見のものもあるので見てみたいと思います。
それでは、また遊びにきますので。どうぞヨロシクお願い致します。
【2006/09/17 11:43】 URL | 隣の評論家 #- [ 編集]


隣の評論家さん、たくさんTBしてくださってありがとうございます。

黒沢清の映画は毎回楽しみにしています。ネット上でいろいろ感想を読むと、困惑している人が多いみたいですね。この映画では泣くぞ、この映画では怖がるぞ、ってあらかじめ決めて彼の映画を見に行くと、困ってしまうかもしれません。怖いって思う場面に笑えるところがあったりするのが、僕にとっては面白いところなんですが。
【2006/09/17 12:23】 URL | fumiya #AKKjkRR6 [ 編集]

はじめまして。
TBありがとうございます!
記事、読ませていただきました。隣の評論家さんの解釈を拝見して、
私が「LOFT」という映画をみて、最後まで解けなかった部分が書かれていて、
今更ながら、のどの奥のつかえが取れた気分です。
つかえが取れた分、この映画への親しみみたいなものが、急に沸いてきました。
素敵な記事、これからも楽しみにしています('∇')
【2006/09/18 03:47】 URL | 菊の助 #- [ 編集]


菊の助さん、コメントありがとうございます。
2年近く前に撮影した映画が今になってやっと公開されるということで、映画会社もどう宣伝したらいいのか困ったんだと思います。いつも観客を戸惑わせる映画を作ってしまう人ですね。それでいて、彼の映画の熱狂的なファンが海外にもかなりいるということで、拒絶する人と虜になる人に二分されるようです。日本でももっとファンが増えたらいいのにと思います。
【2006/09/18 09:26】 URL | fumiya #AKKjkRR6 [ 編集]

3人の女性
こんばんは。
fumiyaさんの解釈はとても納得がいきます。
でも、私は黒沢監督の描いた女性たちの抱えているものがよくわかりません。
礼子はなぜミイラさんの呪い共有することになったんでしょうかね?

【2006/09/29 00:26】 URL | かえる #- [ 編集]


かえるさん、コメントありがとうございます。
個人の心理とか、過去の経歴とか、描くつもりがあまりない人なんでしょうね。三人の女性が、一人の男性を呪い、愛するためにそこにいる、ただそれだけ。幽霊になったりミイラになったり何度も蘇ったりするのだから、「三人」という単位さえ怪しいです、一体何人いるのか。黒沢監督の作品を見ていると、名前とか肩書きとか、そういうものは仮のものでしかない、という気がしてきます。
【2006/09/29 20:58】 URL | fumiya #AKKjkRR6 [ 編集]


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