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Author:fumiya
30代。独身。眼鏡。超短髪。あごひげ少々。映画館に通うのが趣味。コメントやトラックバックはお気軽に。

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Kinetic Vision
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つぐない
少女ブライオニー(シアーシャ・ローナン)の偽証で回り始めた歴史の歯車は、どんなに反省しても、謝罪しても、止めることができない。明るい未来が待っているはずだった青年(ジェームズ・マカボイ)の人生は、恋人(キーラ・ナイトレイ)との別れと逮捕、刑務所、徴兵、出征、撤退、と悪い方向に進んでいく。成長して自分がしたことの意味を理解した彼女(ロモーラ・ガライ)の謝罪はもうこの現実の進行に追いつくことができない。

成長したブライオニーが使っていると思われるタイプライターの音とともに語られるある夏の出来事は、やや混乱していて、時間は前後し、1つの出来事が少女の視点と当事者の視点から二度描写されるときもある。まるで思い出したくない出来事を懸命に思い出しながら語っているかのように、ぎくしゃくした感覚を残したまま、性的気配に満ちた暑い夏が描写される。戦場の描写は彼の視線に寄り添う形で描写され、疲労と病気で彼の意識が混濁してくるにつれ、混沌として現実と夢が交錯したものになっていく。

後に作家になった彼女の人生を変えたのは、青年が使ったタイプライターだ。彼がシーにあてた手紙を書くときに戯れに打った言葉が、まだ騎士道物語のような幼い恋愛物語しか知らない少女にいきなりリアルな性愛を見せつける。彼女は嫌悪感を抱き、その感情が偽証を生み出すことになってしまう。タイプライターが打ったたった1つの単語が、彼女に十字架を背負わせ、彼女は老人になるまで苦しみながら作家としてタイプライターを打ち続けることになる。

取り返しのつかない形で事件は起こり、彼女の謝罪は直接彼らには届かない。取り返しのつかない現実との距離を埋めるものとして、フィクションが物語の中に入ってくる。年老いてなお苦悩の表情を浮かべないと自分の過去を語れないブライオニー(ヴァネッサ・レッドグレイブ)にとって、このフィクションは贖罪のために必要なものだ。まだ人格ができあがっていない幼い頃の過ちをずっと背負い続けてきた彼女の苦悩が、彼女の皺に刻み込まれているような気がして、終盤のインタビュー場面は見ていて胸の詰まる思いがした。

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贖罪 上巻 (1) (新潮文庫 マ 28-3)イアン・マキューアン 小山 太一

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stars重厚な構成で語られる「愛」の物語

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大いなる陰謀
共和党議員(トム・クルーズ)とジャーナリスト(メリル・ストリープ)、大学教授(ロバート・レッドフォード)と学生(アンドリュー・ガーフィールド)、学生同士の討論(マイケル・ペーニャ、デレク・ルークなど)・・・。この映画は様々な議論で構成されている。アフガニスタンでの戦闘場面を除くと画面上で大きな動きがあるわけではない。それなのに、そこで交わされている議論が白熱していておもしろいので目を離すことができない。どちらか一方がしゃべる続ける説教でもなく、日本のテレビ討論番組によくいる、相手の言うことを聞かずに大声でわめく人間もいない。どちらが正しいか、観客自身が考える余地を残すように、この映画は作られている。

芸能ニュースの下にテロップで流れる臨時ニュースはアフガンでの新作戦の展開を報じている。9・11直後と違い、もはやテレビの視聴者は無関心で、そこで実際に血が流されていることを想像することもない。経済的に困窮する若者が軍に行き、裕福な若者は経済的に成功することだけを夢見ている。そのような現状に、教室で、オフィスで学生と向き合いながら、ロバート・レッドフォード演じる大学教授は戦い続けている。彼の教え子二人は他の学生のような無関心よりも戦場に行くことを選ぶ。別の教え子は国内の現状に絶望し、授業に熱心に通わなくなる。性急に現実を変えようとするものと、現実を変えることを諦めたもの。この大学教授はそのどちらでもない。華々しいスポットライトをあびるわけではない教室で、学生の背中を押してやるという地味な仕事が、彼の現実に対する関わり方だ。

共和党議員の語る論理は、ここ数年アメリカ政府が主張し、国民が支持してきたものだ。アメリカ対テロリスト、正義対悪の単純な構図。ただ、そこには嘘がある。イラク、イラン、アフガニスタン、それぞれの国特有の事情が無視され、悪の枢軸というわかりやすい言葉に単純化される。今ではこの論理に懐疑的なジャーナリストも、かつては愛国的な番組を制作しこの対テロ戦争を支えてきた。大企業に買収されて傘下に入ったテレビ局は、スポンサーのために視聴率を稼ぐことが求められ、かつてのような硬派な番組を作る余力は残っていない。

議論を構成する台詞がよく練られていておもしろい。そしてそれを話す俳優たち、特に主演の三人はすばらしい。メリル・ストリープが演技派、トム・クルーズがスター俳優といった先入観を観客は俳優に対して持っているが、二人の白熱した対決場面を見れば、そういう分類はあまり意味がないことに気づくだろう。また、スパイゲームなどもそうだったが、若者に対する愛情を感じさせる役が、今のロバート・レッドフォードにはぴったりはまる。

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魔法にかけられて
ロマンティックなファンタジーの現実離れしたところを嘲笑する、ディズニーの自虐的パロディかと、予告編を見た人は思ったかもしれないが、全くそういう作品ではない。むしろ、現実とファンタジーをいかにうまくすりあわせていくかという、ディズニーらしい作品になっている。

現実の側を代表する合理主義者が娘を一人で育てている弁護士のロバート(パトリック・デンプシー)、ロマンスの側を代表するのがアニメーションで描かれたおとぎの世界からニューヨークに迷い込んだジゼル(エイミー・アダムス)。確かに最初は現実の世界に迷い込んだジゼルやエドワード王子(ジェームズ・マースデン)の滑稽なところが強調される。しかし、現実の世界に住む人たちが生きていくための活力としてロマンスを必要としていることが、明らかになってくる。それが一番よく表されていて、この映画の一番すばらしい場面は、公園で場違いに大きな声で歌い出したジゼルにあわせて、公園中の人たちが歌い始め、ミュージカルのようになっていくところだ。音楽の力で現実がロマンティックな世界に変わっていくプロセスが、エイミー・アダムスによって楽しく表現されている。

ロマンスの側もまた現実から学ぶ。初対面の男性といきなり恋に落ちすぐ結婚するという、現実からあまりにもかけ離れたところを改め、ジゼルと王子はお互いを知るためデートをしてみる。最初場違いなドレスでコミカルな存在だったジゼルは、現代的なドレスを着て、ロバートとダンスを踊る終盤の場面では、せつない恋心を抱いた一人の現代女性の表情になり、魔女との対決シーンでは男性から救ってもらうのを待っている受動的な役割から一歩踏み出すことになる。ジゼルが成長する一方で、剣をもった王子は最後まで頭が鈍く剣の腕を披露するかっこいい場面もない。成長したジゼルにとって理想の男性はもはや騎士ではない。ロバートと王子の違いは、現代女性にとって理想の男性像が変化していることを表している。

絵本を開くところから映画が始まることから、この映画もまた一つのファンタジーだということがわかる。ただ、現代の人たちの感覚に合わせておとぎ話が訂正され改善されていく、ディズニーの映画制作のプロセスを物語の中に織り込んだようなファンタジーという点で、とてもユニークな映画になっている。

魔法にかけられて オリジナル・サウンドトラック
魔法にかけられて オリジナル・サウンドトラックサントラ ジェームズ・マースデン 木村聡子

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