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Author:fumiya
30代。独身。眼鏡。超短髪。あごひげ少々。映画館に通うのが趣味。コメントやトラックバックはお気軽に。

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Kinetic Vision
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ノーカントリー
大金をめぐる血なまぐさい争奪戦があり、それを捜査する良識ある保安官がいる。今までの映画ならどこかでこの二つの線は交錯するのだが、この映画は違う。正義はもう犯罪に追いつけない。No Country for Old Menというタイトルはもう引退を考えている保安官がみた現代のアメリカを表している。自分の力ではもう何も止めることができないという無力感と諦念をトミー・リー・ジョーンズが見事に表している。

血なまぐさい争奪戦の描写には緊張感がみなぎっていて無駄がない。もちろんこの緊張感の中心にはアントン・シガー(ハビエル・バルデム)がいる。プロの殺し屋なので一応仕事の依頼があって殺人を行うのだが、彼の行動規範は仕事の範疇を超えている。常人の理解を超えた行動規範だが、彼はそれに忠実に行動していて、相手が雇い主であれ誰であれ妥協することがない。金を持って逃げているのはベトナム帰りの男(ジョシュ・ブローリン)で、サバイバルの術に長けている。二人の男の行動が無駄なく描写されていてすばらしい。けがの治療、隠し場所の細工、的確な追跡・・・。 金をめぐる争いなのに、二人はストイックにさえ見える。そして、この緊張感をゆるめてしまった側に、あっけなく死は訪れる。

普通の人にとっては、シガーと道路で偶然すれ違ってしまっただけで死ぬ可能性があるのだから、彼はほとんど死神のような存在だ。緊迫感みなぎるコイントスの場面が表しているように、ここで描かれている現代のアメリカは自分の生死を偶然にゆだねるような過酷な世界なのかもしれない。住宅街での交通事故の場面からわかるように、シガー自身もそのような世界の中にいる。そこは弱肉強食の世界でもあり、自分で自分の身を守るサバイバルの能力、情を交えない取引、交渉がすべてだ。シガーはこの過酷な世界に最も適応した人間なのかもしれない。

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バンテージ・ポイント
複数の視点から銃撃事件を見るために、時間が何度も巻き戻される。推理ものでは事件を回想場面で繰り返し描写することがあるものの、映画の時間は普通前に向かって進んでいく。だからこの映画の時間感覚は独特のもので、あれ以上巻き戻しを繰り返されるといらいらさせられたと思う。しかし映画は90分の枠に収められ、登場人物の背景の説明なども極力省略されていて、そこがこの映画のテンポの良さを生み出している。社会派の映画ならはテロリストの社会的背景、人間ドラマだと主人公の家族関係などを挿入することが多いけれど、この映画は事件の現場を映し出すことに集中している。主人公(デニス・クエイド)のシークレットサービスとしてのプロ意識、黒人観光客(フォレスト・ウィッテカー)の子供への思い入れ、テロリスト(サイード・タグマウイ)の緻密な計算、結束、非情さ、大統領(ウィリアム・ハート)が抱く政治理念、テレビスタッフ(シガニー・ウィーバー)の的確な仕事ぶりなど、各人物の特徴的なところを簡潔に描いていて、登場人物が多くてもあまり混乱することがない。

いったん巻き戻しがすむと、あとはカーチェイスなどのアクションが続く。銃撃、爆破で混乱した状況、その中で複数の出来事が同時に進行していく様子が描かれる。巻き戻しの時と違って、今度は次に何が起こるか予測しにくい展開に目が離せない。

一人の少女の身に起こる一瞬の出来事に向かって、すべてが収束していく展開もおもしろい。少女がアイスクリームを買ってもらったとき店の中の男性と目があったこと、広場で黒人観光客とぶつかり言葉を交わしたこと、そんなささいな出来事が少女の運命を左右する大きな意味を持っていたことに、最後に気づくことになる。

バンテージ・ポイント
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ガチ☆ボーイ
映画の中盤に出てくる、主人公五十嵐良一(佐藤隆太)が朝目覚めて大学の部室に行くまでの一連のシーンがすばらしい。昨日までの記憶がなくなった白紙の状態で目覚めた彼が壁一面に貼られた注意書きを見て、机の上の手帳と、大学ノートを何冊も重ねた日記を見る。彼は毎朝そこで自分がどんな障害を負っているのか知ることになる。そこから、日記を見て過去を確認して自己を再構築していく。部屋の壁には持ち歩いているポラロイドカメラで撮った写真がたくさん貼られていて、それらは彼が友人たちと積み重ねてきた時間そのものだ。手帳の写真と地図を頼りに大学の部室に不安な気持ちで近づき、記憶にない友人たちの顔を見て、自分が彼らに受け入れられていることを知って安堵する。無駄のない的確な演出と編集で、毎朝繰り返されるに違いない衝撃、混乱、不安がこちらに伝わってくる。

彼自身の苦悩だけでなく、彼の障害を周りの父、妹(仲里依紗)、友人たちがどう受け入れていくのかも小泉徳宏監督はうまく描いている。例えば、同じ構図で何度も繰り返されるバスの中での女子マネージャー(サエコ)との会話場面。どなったり暴れたりするのではなくむしろうなだれておとなしい感じで画面に収まっている父親役の泉谷しげるが、息子とクラブのキャプテン(向井理)が一緒に銭湯に入っているところをそっと見守っている場面。また、彼が息子の障害を受け入れていく過程の描き方。

学生プロレスのリングは、主人公が「自己」を表現する場として描かれている。段取りは頭で覚えるものだからなかなか覚えられないが、友人たちに教えてもらった技は、アザや筋肉の痛みとともに身体が記憶している。そしてリングで輝くのはいわゆる「勝ち組」ではない。正統派のスターにはなれそうにない、コントで使うようなコスチュームを着ている部員たちは、プロレスという虚実入り交じった舞台でこそ輝くのであり、弁護士になることを期待されながら記憶障害でその道から外れた主人公もまた、試合に勝とうが負けようが関係なく、独特の奇妙な動きと粘り強いファイトで観客を沸かせる。人生で欠点というか、マイナスを背負ったものたちが輝く瞬間をこの映画は捉えている。

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エリザベス ゴールデン・エイジ
スペインの来襲を前に重圧でつぶれそうになっている弱々しい表情からイギリス軍を前に鎧姿で演説する凛々しい表情まで、少女のように震えながらキスをする場面から嫉妬で怒り狂う場面まで、ケイト・ブランシェットの幅のある演技力を堪能できる映画だ。歴史物としてはイギリス人の愛国心を満足させる有名な出来事を無難にまとめた映画で、敵になるスペイン側は典型的な悪役として描かれているが、見所はそういうとこではなく、自分を暗殺しようとしたスコットランド女王メアリー(サマンサ・モートン)に死刑を下す際の苦悩や恐れ、冒険家ローリーに対する感情の揺れなど、エリザベス女王の感情、表情がダイナミックに変化するところにある。

ヴァージン・クイーンであること選んだ彼女の心の揺れを表す存在として、侍女のベス(エリザベスの略称、つまり女王と同じ名前)がいる。女王は自分の分身として侍女(アビー・コーニッシュ)をローリー(クライブ・オーウェン)に近づけさせ、目の前で一緒に踊らせる。しかし、侍女とローリーの関係が深まっていくと、彼女は彼らを許すことができない。自分の分身のように常にそばに置いて寵愛してきた侍女だが、彼女は一人の女性であり子供を産むこともできる。国民の聖母として生きることを選んだ自分とは違うことに気づき、彼女は自分の立場がいかに孤独か知ることになる。

ある程度当時のイギリスの置かれた状況についての予備知識があった方がいい映画だが、そういうことがわからなくても当時の宮廷の様子を再現した場面は衣装が華やかで見ていて楽しい。無敵艦隊との戦いはあるが戦争場面に力を入れている映画ではない。

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エリザベス一世―大英帝国の幕あけ (講談社現代新書)青木 道彦

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