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Author:fumiya
30代。独身。眼鏡。超短髪。あごひげ少々。映画館に通うのが趣味。コメントやトラックバックはお気軽に。

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スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師
銀のカミソリは、自分から妻子を奪った男の喉だけを切り裂くはずだった。しかし、いったん殺人の衝動に支配されてしまうと、彼はもはや無差別殺人をとめることができない。彼の殺人は人間的な動機をもつ復讐ではなくなり、一階のパイ屋に「原材料」を供給する機械的な日々の労働に過ぎなくなる。まるで機械の前で行う流れ作業のように、彼は客の喉を次々と切り裂き、客の肉体は一階の床に鈍い音を立てて落ちる。妻の面影は時を経るにつれて薄れていき、パイ屋の女主人は彼がこのまま過去を忘れて、精肉製造マシンの歯車として働き続けてくれることを期待している。彼が仕事をする二階には大きな窓があり、彼はそこから過去の幸せな生活を思い浮かべるが、その足元は血で染まっている。

皮肉なことに、彼の行為は復讐相手の判事に似ている。この判事は欲しいものは権力と暴力で奪い取り、気に入らないものは次々と絞首刑にしていく。理髪師から美しい妻を奪い取るために振り落とされた棍棒の一撃が、理髪師を殺人機械に変え、暴力は連鎖していく。上のものが下のものに容赦なく暴力を振るい、上に這い上がるためには誰かを犠牲にするしかない世界。パイ屋の地下で行われている残酷な行為と、パイ屋の女主人が夢想する上品な上流社会の生活が皮肉なコントラストになっている。

では愛はどのように描かれているのだろうか。理髪師は過去の妻を想い歌を歌い、彼の背後では女主人が理髪師のことを想い歌を歌う。二人の視線は重なり合わず、二人のラブソングは食い違ったままだ。店の手伝いとして雇われた孤児院出身の少年は女主人を母のように愛し、理髪師と別れることを勧めるが、女主人は少年よりも理髪師への愛を優先する。判事は権力で何でも奪い取り、性の快楽を享受しながらも、最後まで求愛相手から愛されることはない。唯一の救いとなるかに見える、理髪師の娘と船乗りのロマンスに関しても、二人が本当に愛し合っているとわかる場面はなく、ハッピーエンドを迎えたかどうかもわからない。娘は今の悪夢のような拘束された生活から逃れたい、判事のもとから逃げ出したいという気持ちが
強く、二階の窓の下で見つめている男性への愛情や新しい生活への期待を口にすることもない。彼女をさらう(steal you)と何度も口にする船乗りは彼女を強く愛してはいるのだろうが、何か食い違っているような印象を受ける。殺人機械として他人の喉を切り裂き続けた理髪師は、自分の愛そのものを切り裂くという悲劇的な形で、その動作を停止することになる。

血なまぐさい、グロテスクな話を下敷きにしているのに、崇高な悲劇性を帯びた映画になっているのは、ティム・バートン監督の演出の確かさと美術のすばらしさのおかげだろう。

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