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Author:fumiya
30代。独身。眼鏡。超短髪。あごひげ少々。映画館に通うのが趣味。コメントやトラックバックはお気軽に。

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Kinetic Vision
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鉄コン筋クリート
宝町のいかがわしいストリップ小屋が、少年が大人になるための場所ならば、レジャー施設「子供の城」は、大人も子供もそろって子供のまま遊び、金を消費する場所だ。企業にとってコントロールしやすい、従順な消費者としての子供。混沌として薄汚れた猥雑な空間、浮浪児とヤクザとホームレスと地元の刑事がいつも小競り合いを起こしながらも共存してきた宝町は開発によって変わっていき、明るく、清潔な建物が次々と建てられ、汚いものは排除されていく。巨大な子供の城は金持ちの親に連れられた子供のための施設であって、クロ(二宮和也)やシロ(蒼井優)のような浮浪児のための場所ではない。

悪ガキ同士の小競り合いに暴力はつきものだ。また、悪ガキと大人との間にも小競り合いは起こる。しかし、それはコミュニケーションの一種であり、完全に関係が絶たれるわけではない。冒頭の場面で殴り込んできた悪ガキたちはシロから貯金箱をもらい、刑事の藤村のような大人たちはクロたちの行動に眉をひそめることはあっても、どこかで彼らを気にかけている。この町で育ってきたヤクザ鈴木(田中泯)は彼らの姿に昔の自分を見ているのかもしれない。一方、子供の城計画を推し進める蛇(本木雅弘)が放つ刺客たちは、地元の人間が理解できない言語を話し、相手の命を絶つことだけを目的にしている。

華やかで清潔に見える子供の城に、シロの無垢な魂の居場所はない。そこには、シロがリンゴの種を植える場所、がらくたのように見えるおもちゃを置いておく場所はないだろう。シロの想像力の中で、電話ボックスは宇宙との交信に使われ、リンゴは大きく成長する。どんなレジャー施設も、シロの想像力に追いつけない。

ツルツルの質感でなめらかに動く最近のアニメーションと、手書きの線の感触を生かした作画。シロが生きる世界にふさわしいのがどちらなのかは明らかだ。リアルなCGよりも、丁寧に書き込まれた手書きの線のほうが、宝町の雰囲気や登場人物の感情を表現するのに向いている。それでいて、単なる懐かしさだけにとどまらないスピード感を兼ね備えている。

暴力と無垢、クロとシロ。現実を生き抜くには力が必要で、クロはシロを守って生きてきた。しかし、暴力の歯止めを失うと、後戻りできなくなる。クロの心の足りないねじは、シロが持っている。世界中にいる暴力で身を守らざるを得ないような子供たち、暗黒に落ち込もうとしている子供たちに、クロが見たあの白い鳩は見えるだろうか。無垢な魂の象徴、白い鳩を見失ってはいけない、暗い淵の一歩手前で踏みとどまることために。

鉄コン筋クリートall in one
鉄コン筋クリートall in one松本 大洋

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starsサイズが大きくなったのには理由があるし、必然性もある。
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硫黄島からの手紙
「父親たちの星条旗」で、主人公たちは戦場で死んでいった者たちの存在を感じながら、戦後を生きている。硫黄島で死んでいった者たちの声はもう届かないし、誰も耳を傾けようとはしない。そのことに彼らは傷つき、戦争について沈黙を守る。

「硫黄島からの手紙」は、死んでいった者たちの届かぬ声が、地中から掘り出される場面から始まる。これらの声に、私たちはどういう態度をとるべきなのか。英雄と美化することも、人殺しと罵ることも、共に間違った態度ではないのか。イーストウッドがこの二つの作品で見事に成し遂げているのは、戦場で亡くなった人たちに敬意を払い、できるだけ虚飾を排して彼らを描き、同時に彼らを殺し合いへと駆り立てた戦争を批判的に描くことだ。モノクロに近いくらい色を落として、血の鮮烈な赤い色だけが浮き出るような画面は、題材にぴったり合っている。

西郷(二宮和也)の妻(裕木奈江)を除いて、兵士たちの家族が直接描かれることはない。そのことがより兵士たちの孤独を強調する。戦場の様子を正直に書いた手紙は検閲で握りつぶされる。栗林(渡辺謙)でさえ子供にはアメリカに滞在したときの楽しい思い出を描いた絵手紙を書いていて、戦場の地獄を詳しくは伝えていない。兵士たちの心からの叫びは本土には伝わらない。もちろん、これは日本兵に限ったことではない。手当を受けたものの結局死んでしまったアメリカ人捕虜は、母親からの手紙を持っていた。母親は息子からの返信を待っているだろう、しかしそれが届くことはない。

戦場で完全に人間性を失った人間と、失わなかった人間がいる。一方には部下を道連れにして自決する上官や、無意味に犬を射殺する憲兵隊員がいて、他方には敵兵も人間であることを忘れていない栗林と西(伊原剛志)、二人の将校がいる。もちろん二人は軍人としての職務を果たし、敵兵に引き金を引く。しかし勇ましい言葉で部下に号令をかける栗林は、心の中では戦前アメリカ軍の将校と楽しく会食したことを想い出している。西もまたオリンピックでアメリカ人たちと楽しく暮らした日々のことを覚えており、捕虜を人間的に扱う。これはアメリカ軍でも同じことで、捕虜になった日本兵を射殺するものもいれば、捕虜に手当てをしてやるものもいる。過酷な戦場で人間性を保っていられるかどうかは国籍の問題ではなく個人の問題だ。

軍国主義の時代の中で、二人の将校は日本の外の世界を知っている。そして二人の将校の側にいて歴史の目撃者となる西郷は、戦前パン屋を営んでおり、家では本を良く読んでいて、上官や憲兵の軍国主義から距離を置いている人間として描かれている。おとなしく目立たないが、状況を判断する聡明さを持っているという点で、西郷は衛生兵のドクとよく似ている。そして、傷ついた二人が横たわるのは、同じ海岸なのだ。

NHKスペシャル 硫黄島 玉砕戦~生還者 61年目の証言~
NHKスペシャル 硫黄島 玉砕戦~生還者 61年目の証言~ドキュメンタリー

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stars戦死というもの

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パプリカ
クールで知的な白衣の女は、その無意識の中に奔放でコケティッシュな赤い服の女を隠している。クライアントの無意識に眠る葛藤を探るために開発された装置DCミニを使って、千葉敦子(林原めぐみ)は他人の夢の中に入る。それは治療目的のはずなのだが、赤い服の少女パプリカは混沌とした他人の夢の中を楽しそうに飛び回っている。特に男性の患者にとって、夢の中に現れるパプリカは文字通り誘惑的な夢の女であり、彼女に導かれ、患者は自分の内に眠る葛藤の原因を発見する。心を閉ざしがちな患者を誘惑する魅力、それが精神科医千葉敦子/パプリカの治療の秘密だ。

最初から、粉川刑事が見る夢の映像、様々な映画のパロディが次々に現れるテンポに興奮し、次に、誇大妄想患者が見る夢の映像、玩具や家具など様々な物がうねりながら歩いていくパレードの場面に圧倒される。さらにこの狂気のパレードが人々の意識の中に次々と侵入していき、意識を乗っ取られた人々が狂った行動を取り始める場面のリアリティが恐ろしい。何が起こるか分からない予測不可能な夢の世界を、赤い服の少女パプリカは、孫悟空、人魚、妖精など様々な姿に変化しながら駆け回る。今敏監督の細部まで行き届いた描写力と場面をつなぐリズム感は、相変わらずすばらしい。

夢は個人の無意識の中に閉じこめられている。目を覚ませば、人は現実という、他人と共有している世界の中に引き戻される。しかし、他人と夢を共有して見ることができる装置DCミニによって、夢は個人の檻から解放される。いったん解き放たれた夢は、増殖して他人の意識に入り込んでいき、やがて現実に取って代わろうとする。

この作品に対して生真面目に精神分析的解釈をやりすぎるのは、あまりいい見方ではないだろう。テンポ良く次々に現れる色彩あふれる夢のイメージの連鎖に身を任せていればいい、パプリカに誘惑されるままに。

千年女優
千年女優今敏 荘司美代子 小山茉美

おすすめ平均
stars人の一生を描く…。
stars時空を軽々と飛び越える登場人物たち。アニメだからこその表現が実に新鮮でした
stars映画館ではわからないけれど・・・
stars私の中では最も好きな映画作品です。
stars一般的には隠れた名作。勿体ない。

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武士の一分
ちょんまげ姿の木村拓哉が画面に登場したとき、最初はなかなか「キムタク」のイメージが頭から離れなかった。妻加世(檀れい)をからかったり徳平(笹野高史)に悪態をついたりする時の口調が、方言とはいえ、いつもの木村拓哉を思い出させたのかもしれない。しかし、主人公が視力を失うあたりから、異様な雰囲気を漂わせた武士三村新之丞が画面上に現れる。

視力を失っているため、どこに焦点が合っているか分からない目つきになり、さらに最後の対決の場面に近づくにつれ、殺気を漂わせた表情に変わっていく。テレビの狭い枠の中では出すことのない雰囲気と表情を、この映画で木村拓哉は表現している。

もちろんそういう雰囲気は役者だけではなくスタッフの力によって作り出されている。加世がそんな冷たい眼で私を見ないでください、と怯えるときの、新之丞の視力を失った目は、薄暗い部屋の中で異様な光を放っている。最初はきちんと整えられていた髷が、後半に崩れてきて、それが追い詰められた男の異様な雰囲気を作り出す手助けをしている。そして、島田(坂東三津五郎)との決闘の時に吹いている風。

山田監督が描き続けている下級武士の世界というのは、いつ見ても興味深い。一方には毒味の儀式のように形式張った世界があり、他方には農民や町人の生活に近い慎ましい世界がある。主人公たちはちょうどその中間に属している。 庶民的喜劇の部分と、殺伐とした武士の世界とのバランスが面白い。昼行灯のような日常を送っている樋口が、仕事のミスによって切腹に追い込まれる。隠居した後の慎ましい余生を考えていた新之丞が毒味で倒れ、果たし合いへと向かっていく。

物語は一人の武士の日常生活を丁寧に描いたもので、藩が大きく揺れるような大事件が起こるわけではなく、派手な斬り合いの場面も少ない。観客によってはやや単調に感じられるかもしれない展開の中で、徳平役の笹野高史がいい味を出して、場面に変化を与えている。

たそがれ清兵衛
たそがれ清兵衛真田広之 藤沢周平 山田洋次


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