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30代。独身。眼鏡。超短髪。あごひげ少々。映画館に通うのが趣味。コメントやトラックバックはお気軽に。

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Kinetic Vision
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嫌われ松子の一生
松子(中谷美紀)の人生を客観的に眺めれば、不幸とか悲惨とか、そういう言葉が思い浮かぶかもしれない。しかし、彼女はいつも楽しい歌を口ずさんでいて、彼女の意識の中ではかわいらしい色とりどりの花々が咲き誇っている。ろくでもない男と付き合っているのに、彼女にとって相手の男はお花畑の上で輝く月になっている。男性視点から見れば男性側のくだらない劣等感の解消と性欲処理でしかない不倫のエピソードでさえ、松子視点ではとびきり陽気で幸せな歌が流れている。

愚かというか、じっくり考えて行動するタイプじゃないことは、教師時代に学校で起きた万引き事件の対応を見るとよく分かる。多くの男性が登場するが、彼女は二またをかけるとか、駆け引きを駆使するということが全くない。しかしこの計算しない愚かさが、彼女の人生をスピード感あふれる映画的なものにしている。ひどい目にあって一つの恋愛が終わり、反省する間もなく、次の恋愛が始まる。その都度、自分の全身全霊をかけて、彼女は相手をまっすぐに愛している。彼女の人生をたどる視点役となる甥の笙(瑛太)が感じているように、これほどのエネルギーで人を愛せる人を不幸と呼ぶことができるのかと、考え込んでしまう。

彼女が男性に求めていることは複雑なことではない。自分だけをずっと見てくれること。おそらく誰もが持っている普遍的な感情だ。父親(柄本明)が病弱な妹(市川実日子)をかまってばかりで自分の方を振り向いてくれないという子供時代のエピソードが、その後の人生に大きく影響している。彼女の子供時代のエピソードには父親との関係がほとんどすべてで、母親の存在はほとんど消されている。晩年の引きこもりの時期でさえ、テレビで見た光GENJIの内海を好きになるだけじゃなく、自伝に近いような長いファンレターを送って返事が来るのを待っている。しかし、彼女の単純で切実な気持ちに応えられる男性は最後まで現れない。

少女時代に父親の前で見せた無邪気な笑顔を、松子は数々の男遍歴の中で見せてくれる。特に、やくざの元教え子龍洋一(伊勢谷友介)の前で、殴られてあざができた顔で微笑む場面では、普通の人間のレベルを超えて神々しい感じすら抱く。彼女が思い描く男性との理想の生活は、子供時代に思い浮かべていたものとほとんど変わらず、無邪気で単純だ。あれだけ男性に裏切られたり殴られたりひどい目に遭い続けているのに、晩年にいたるまで彼女の脳内の恋愛世界は常に花が咲いて陽気で楽しい。いったいこの強さは何なんだろうか。

音楽の選択、画面の色調など、映画の細部すべてが松子の世界を表現していて、それらが全くたるむことのないテンポでつながれている。ディズニーアニメ風に色づけされた場面、夕焼けの色、雪の白さ・・・松子の心情や状況に応じて場面の色や音楽はどんどん変化していく。中島哲也監督の「松子」への思いを、どの細部からも感じ取ることができる。
嫌われ松子の一生 通常版
嫌われ松子の一生 通常版山田宗樹 中島哲也 中谷美紀

おすすめ平均
starsこの映画の面白さをどう伝えたら良いのだろう、必見!
starsすごく清々しい気分に・・
stars切ないなぁ…
stars体感速度1時間!
stars21世紀の映像再び

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ダ・ヴィンチ・コード
原作なら興奮する箇所になるアナグラムやクリプティックの解読は文字を読み解く楽しさであり、それを映像で再現するのはほぼ無理だろう。ロン・ハワードはそれらの場面で娯楽映画らしいカーチェイスやCGを絡めたりして何とか映画として成立させようとしている。数々の暗号は映画の中ではあっという間に解読されてしまうので、謎解きの過程をゆっくり楽しむこともできない。また、原作では最初に出てくる館長の死体の状況からソフィーの名前に至るまで、原作小説のすべての要素は読者にとっては解読すべき暗号であり、生々しい存在感を持つ人間的なキャラクターが求められているわけではない。ただ、映像化され生身の肉体を持つ俳優が演じると、キャラクターの動機や心理にあまり説得力が感じられないことに気づく。

逆に、生身の人間が演じることで物語に原作以上の広がりが出た部分もある。それがオドレィ・トトゥ演じるソフィー・ヌブーだ。宗教における男性性と女性性がテーマの一つとして登場するこの作品で、聡明そうで美しいが、過剰に女性の性的魅力を強調することはないオドレィ・トトゥはこの役にぴったりだ。さらに、宗教における人間性と神性という別のテーマから見ても、彼女は体も小さく親しみやすい笑顔をみせながら、ラングドン(トム・ハンクス)の閉所恐怖症を和らげる場面のように時には大きな存在感を感じさせる。

結末を知った後で、もう一度彼女が出ている場面を思い出す。自分は神の使命を果たしていると思いこみ、次々に殺人を重ねる修行僧シラス(ポール・ベタニー)は、ソフィーの首にナイフを突きつける。また、飛行機内でソフィーとにらみ合った彼は、彼女をののしる言葉を吐き、彼女は「地獄で焼かれろ」とやり返す。また、キリストの秘密を暴き、マグダラのマリアを復権させることに執念を燃やす「導師」は、真実を何も知らずにソフィーの頭に銃を突きつける。彼らの信じる宗教、神性は、生身の人間から遊離してしまっていることに、僕たちは気づく。

僕たちはキリストは神であるという解釈を前提にしてキリストの物語を読む。しかし、キリストの同時代人にとって、目の前のキリストは生身の肉体をもった人間をもっていて、神への信仰と人間の関係はもっと複雑だ。この映画は娯楽映画であり宗教についてこれ以上深く追求するわけではないし、依拠している資料に関しても批判している人がいるようだが、生身の人間と神のような超越的な存在の関係について、考えるきっかけは与えてくれる。

ダ・ヴィンチ・コード デラックス・コレクターズ・エディション
ダ・ヴィンチ・コード デラックス・コレクターズ・エディショントム・ハンクス ダン・ブラウン ロン・ハワード

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グッドナイト&グッドラック
全く違う二つの「声」が対決する。マッカーシー上院議員とエド・マロー。番組の合間に流れるジャズを除けば、二人がそれぞれ自分の主張を語っているとき、場面を盛り上げるような余計な音楽は一切入らない。僕らは耳を澄まして、どちらの声が人の心を動かす強さを持っているか、感じ取る。

共産主義という「悪」を追求するマッカーシー議員の声(当時の映像がそのまま使われている)は、相手への攻撃性に満ちている。相手に敵、悪というレッテルを貼ることが、彼の議論の常套手段だ。レッテルを貼る根拠は、「軍部からの情報」だとか「FBIからの情報」だとか、あやふやなものばかりなのだが、圧力を恐れそれを直接追求するマスコミは少ない。確実な証拠なしに誰かを悪と決めつけるこの身振りは、やがて密告という形で全米に広まり、赤狩りの興奮と恐怖が全米を覆う。密告する側は独りよがりの正義感に酔いしれ、密告される側は他人の視線やささやきにすら圧力を感じる。

エド・マロー(デビット・ストラザーン)の声は、聞き手の感情を刺激し煽るのではなく、的確に事実、証拠を提示し、視聴者の理性に訴えかける。一定のトーンを常に保ちながらも、そこには強い意志の力が感じられる。番組で友人の自殺を伝えるとき、彼は泣いたり叫んだりすることはない。しかしそこに押し殺した強い悲しみがあることを、彼の低い声から聞き取ることができる。

マッカーシー議員がマローに対する自分の主張を語る。これはマローの番組だが、彼はそこに一切コメントを挟まない。一週間視聴者に考える時間が与えられた後、マローが反論する。告発された者を呼び出し一方的にレッテルを貼るマッカーシーの委員会でのやり方に比べ、これはフェアな手法だ。ただ、マッカーシーの議論は相変わらずあやふやな証拠に基づいたレッテル貼りで、次の週マローによって全部剥がされてしまう。マローは反論の間声を荒げることもないのに、その声はマッカーシーの声を圧倒している。

マローはスピーチの中でテレビの進んでいる方向に疑問を投げかける。テレビもマスコミも、マローが望んだのとは違う方向に進んでいるようだ。政治の世界にもテレビの世界にも、扇情的な声があふれ、討論場組でさえ、出席者と視聴者の感情を煽る手法がとられる。僕たちにはマローのような信頼できる理性的な声が必要だ。

グッドナイト&グッドラック 豪華版
グッドナイト&グッドラック 豪華版ジョージ・クルーニー グラント・ヘスロヴ デヴィッド・ストラザーン

おすすめ平均
stars贅肉ゼロ
starsジョージ・クルーニーさま
starsとにかくエド・マローが渋カッコイイ! 
starsグッドナイト&グッドラック

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ナイロビの蜂
原題はThe Constant Gardener。よく手入れされた庭が先進国であり、その外は貧困に苦しむ国々、特にアフリカだ。僕たちは庭の美しさを愛でながら、それがどこから養分を吸い上げているのか、知ろうとしない。この映画に登場する先進国の製薬会社にとってアフリカは新薬の効果を試す人体実験の場であり、同時に大量の薬を売りさばく市場でもある。このシステムの中で、アフリカの人々は病気に対する根本的な解決策を与えられないまま、先進国の薬を先進国よりも高い値段で買わされ続けることになる。

イギリスの外交官である夫(レイフ・ファインズ)の前にはよく手入れされた庭がある。この心地よく安全な世界の外で何が起こっているか、彼は知らないわけではないが、あまり見ないことにしている。しかし妻(レイチェル・ワイズ)は外の世界で苦しんでいる人たちを見過ごすことができない。彼女は自ら危険な場所に身を投じていくが、穏やかに生きている夫を巻き込みたくないと思い、自らの活動をあまり夫に話さない。その結果、二人には微妙な距離が生じていて、その距離が埋まらないうちに、彼女は殺害されてしまう。

これは、夫が彼女の残した証拠を元に製薬会社の不正を追うサスペンスであると同時に、彼女がどんな人間だったか、そして自分が彼女にどれほど愛され、守られていたかを知るラブストーリーでもある。眠っている夫を撮影しながら、妻は言う、「彼は雑草のない世界を夢見て眠っています」と。しかし、実際には、世界はもっと汚れている。事件を追いながら、彼もまた庭の外に広がる危険地帯に身を投げ出していく。

彼女の行動の足跡をたどる旅は、彼女の情熱を共有するようになる旅でもある。生前、互いへの配慮によって生じていた距離が、この旅で縮まっていくように見える。しかし同時に死によって二人は引き離されている。昔二人で住んでいた家を窓越しにのぞき込みながら、彼は彼女の美しい笑顔をはっきりと思い出すことができるが、ガラス窓に隔てられ、彼女に触れることはできない。しかし、長い旅路の果て、アフリカの美しいトゥルカナ湖の前で、彼女に触れる瞬間がやってくる。

ナイロビの蜂
ナイロビの蜂レイフ・ファインズ ジョン・ル・カレ フェルナンド・メイレレス

おすすめ平均
starsイギリス・サスペンスの本流
stars危機と破滅
stars2回見る必要を感じた映画・・・・・
stars傑作!
starsアフリカの現状

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LIMIT OF LOVE 海猿
消防官や海上保安官、自衛隊員といった、救助の時自分の身を危険にさらす人々がいる。彼らが物語化されるとき、しばしば殉職=英雄の図式が安易に導入される。もちろん、実際にそういうことは起こるのだが、本当に称賛されるべきなのは、彼らがそういう現場から生きて戻り、また次の現場に向かうという生活を日常としている点だろう。だから、例えば9.11のテロの時に多くの消防士が犠牲になったとき、彼らの死を美談にすることよりも、あのビルの構造が急激な崩落を起こす危険性を早く現場に伝えられなかったことが問題になるべきだと思う。そういう意味では、生きて還る技術の習得=訓練に焦点を当てた1作目の海猿は、作中死者が出るとはいえ、やや趣の違う物語になっていた。

現場で救助に当たる人間の命が軽視されるというのは、本末転倒な話だ。Limit of Love 海猿の中でも、民間人が船に取り残されていることを知ったマスコミは、危険性を考えて救助を中止した海上保安官たちを会見で非難するのだが、これは現実にありそうな場面だ。危険な場所で救助し、そこから生還する技術を持っていることを称賛する代わりに、命を賭けて、といった安易な言葉で彼らの仕事を表現する人々は、実は彼らの命を軽く見ているような気がする。

海猿のヒットで注目を浴びている海上保安官はいろんな意味で最前線に立たされていると言えるかもしれない。島国の国境線は海にあり、領土問題でもめるたびに、彼らが危険な最前線に立たされることになる。今回の映画ではそういう問題は出てこないが、テレビドラマや原作では国境付近での不審船との遭遇が描かれていて、銃撃戦と救助という、全く矛盾する行動を主人公たちは体験する。隣接する近隣諸国と友好的な関係が保てないという異常な状況を僕たちが作り出し、彼らが危険な場面に遭遇する確率はますます高くなっている。テレビシリーズの海猿でも殉職者が出るのだが、現実に殉職や犠牲といった言葉が新聞紙面を飾り、それに泣いたり怒ったりする前に、それを防ぐ手段を考えることが大事だ。

海猿はミニシアター系の映画が好きな人は全くだめだろうし、テレビドラマなどのパターンにはまるのが好きな人は好きになれる、そういうタイプの映画だ。特に会話場面は今のテレビドラマ風のノリなので、そういうのが苦手な人はだめだろう。一作目(藤竜也が映画の雰囲気を引き締めていた)では救助して生還する技術を身につける訓練が描かれ、今回(もう少しベテラン俳優がいた方がよかったと思う)は救助場面が描かれる。一作目の訓練場面もそうだったが、しっかりと鍛えられた伊藤英明の腕の筋肉が、救助場面、特に救助者を背負ってはしごを登る場面を説得力のあるものにしている。

LIMIT OF LOVE 海猿 プレミアム・エディション
LIMIT OF LOVE 海猿 プレミアム・エディション伊藤英明 羽住英一郎 加藤あい

おすすめ平均
starsウミゾーから一言
stars号泣!
starsただの恋愛映画ではないですよ!
stars伊藤英明にハマった
starsこれはかなり長くドキドキさせられました。

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ブロークン・フラワーズ
ドンファンのようなプレイボーイにとってにとって女性は複数なのか、一人なのか。多くの女性と関係を持つドンファンのような男性は、一人の女性の元にずっととどまっていることができない。しかし、結局のところ、彼が追い求めているのは一つの女性のイメージなのではないか。この映画でそれは、ピンクのイメージで統一されている。

主人公ドン・ジョンストン(ビル・マーレイ)の元から、同居していた女性(ジュリー・デルビー)が去っていく。今までにも多くの女性とつきあってきた彼は、誰か一人を結婚相手として選ぶことができない。差出人不明のピンク色の便箋が届き、息子がいることを知った彼は、隣人(ジェフリー・ライト)の立てた計画に基づいて、過去に付き合った女性たち(シャロン・ストーン、フランセス・コンロイ、ジェシカ・ラング、ティルダ・スウィントン)を訪ねる旅に出る。

普通なら、過去をたどり直す旅は、自己を再発見する旅である。そして息子を捜す旅は、自分のアイデンティティが未来へと受け継がれていくことを確認する旅である。ところが、ドンの旅はそんな旅とは全く異なっている。

旅が進めば進むほど、彼が探し出すべき女性のイメージは、ピンクを媒介にして、分裂し、拡散していく。女性たちの性格にほとんど共通点はないのに、なぜかみんなピンク色の何かを持っている。女性たちはさらに増殖していく。空港でクロスワードをする脚の美しい客室乗務員(メレディス・パターソン)、素っ裸で現れる十代の女性(アレクシス・ジーナ)、動物クリニックのミニスカートの受付嬢(クロエ・セヴィニー)、花屋の娘(ペル・ジェイムス)・・・。旅を続ければ続けるほど、彼は混乱していく。手紙を出した女性が誰であるか分からない以上、息子のイメージもはっきりと定まらないままだ。通りすがりの十代の男性がみな息子のような気がしてくる(本物のビル・マーレイの息子までいる)。あの手紙は、「女性たち」からの手紙なのだろうか。

自分の名前でさえ、何度もドン・ジョンソンと間違えられる。隣人の名前であるはずのウィンストンという名は、昔の恋人が飼っていた犬の名前でもある。狂気というほどおおげさなものは出てこない。しかし、何かがずれていて、どこかがおかしい。自分がどこから来て、今どこにいて、そしてどこに向かっているのか、そしてどこが終点なのか、全く分からない旅。

ブロークンフラワーズ
ブロークンフラワーズビル・マーレイ ジム・ジャームッシュ ジェフリー・ライト

おすすめ平均
stars★ラストに納得がいかず★
starsジャームッシュで2番目に好きだ!
starsビル・マーレイが愛しい

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